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方南町ストーリー

秀文堂書店

進化し続ける町の本屋さん

町の書店を取り巻く現実

 日本の本屋さんは、本と雑誌を同じ店舗で販売する。私たちが当たり前だと思っているこの営業形態は、世界的に見て実は珍しいということをご存じだろうか?

 欧米では、書籍は本屋が、雑誌や新聞は街角の売店が、マンガは専門店が扱う。日本のように、一か所ですべてを買うことはできないのだ。 「全国どこの書店に行っても、同じ本が同じ値段で売られている」というのも、日本独自のシステムだ。

 これは文化を守るために法律で決まっているからで、「この本屋には何冊」などと販売冊数も取次会社が決めて書店に発送している。

 つまり、書店の方が「この新刊は売れるから何冊欲しい」と思っても、 欲しいだけの冊数を思い通りに仕入れることが難しい。

 秀文堂では、「それだけではお客さんの求めに応じられない」と、神田にある「本屋さんに本を売る本屋」へ頻繁に出かけて扱いたい本を仕入れている。

 売れ残りが出る可能性があるが、地域のお客さんの好みも考え、魅力的な品ぞろえのための経営努力だ。

 それ以外にも、個人経営の書店が作った全国的なグループ「ネット21」に所属している。

 ここでは共同で出版社に仕入れをかけあったり、魅力的な商品棚の作り方を他店にアドバイスしあったり、お互いに協力して大手のチェーン店に負けないように頑張っている。 

秀文堂の店頭にて、社長の高畑さん

未来ある子どもたちへ、「読み聞かせ」の取り組み 

 「忙しい大人たちに本をすすめるのは、もうあきらめた」と、社長の高畑さんは冗談めかして話す。 「これからを担う子どもたちにこそ、想像力を高める読書の習慣をつけてほしい」

 高畑さんには二人の子どもがいる。上の子には小さいころから積極的に読み聞かせをした結果、小1でハリーポッターシリーズを読むような読書家になった。

 しかし二人目は、忙しさにかまけてついついおろそかに。すると二人の読書量には明らかな違いが出た。 「読み聞かせの効果は、自分たちの子どもで実証済みです」

 そんな経験もあってか、秀文堂では店内での「読み聞かせイベント」 を定期的に行っている。

 毎月第三土曜日の午後1時から3時には、二階の児童書コーナーを広げた上にマットを敷き、店内にある本をどれでも読んでもらうことができる。対象は就学前の乳幼児。

 出入りも自由。気軽に出かけてみてはどうだろうか。

 また、絵本の棚の陳列はそれぞれ対象年齢別に区切られているので、 子どもに合った本を選びやすくなっているのもポイントだ。

 今後は子ども向け以外にも、店舗二階の棚を移動させてスペースを作り、例えば落語会をするなど大人向けのイベントも開催していきたいと のこと。

 本の隣に関係する雑貨を置いたり、季節の企画棚を設けたり......品揃え以外にも展示の方法にも工夫を凝らし、「遊び心のある面白い本屋」 を目指している。 

ジャンルを問わず、おススメの本がならぶこの棚は要チェック 

オリンピックからオリンピックへ

秀文堂が方南町にオープンしたのは、昭和39年。東京でオリンピックが開かれた年だった。

 それまでは和泉で営業していたが、オリンピックの2年前に地下鉄の方南町駅が開業していたこともあり、「これからは方南町だ」という大家さんの勧めで移転した。

 当時、方南町は釜寺の参道としてすでに商店街ができており、店舗としては新参者だったという。

 秀文堂の二代目である高畑さんは、その時ちょうど母親のお腹の中にいた。

そんな大変な時期にあえて移転したのは、オリンピックと新しい鉄道に町が沸いていたからだと想像できる。

 2020年の新しいオリンピックまでにも、秀文堂はいろいろな新しい取り組みに挑戦していくことだろう。 

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